ダメ人間ブログ

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【第二期電王戦】第2期電王戦、第2局の棋譜を見たら、改めてPonanzaの指し回しに感動した話【第二局】

今はもうなくなってしまいましたが、数年前まで人間 vs コンピューターの頂上決戦ともいえる電王戦という棋戦がありました。


私はこれが大好きだったんですよ。


プロの中から選抜された人間界最強の棋士が最強のコンピューターに挑むという、最強対最強の頂上決戦が見られるっていうのがもうたまらなくて。


何ていうのかな、圧倒的な強さを持つ将棋星人が地球侵略に来たけど、最強の人間がそれを阻止するために立ち向かうみたいな感じが良かったんですよね。


当時は、もうプロ棋士よりコンピューターの方が強いというのが定まってきた時期でしたが、まだ最強の人間が対局してないんだから分からないという希望みたいなのがありました。


トップ棋士ならやってくれる、そんな期待がね。


そしてついにやってきたんです。


現役名人 vs 最強コンピューターが戦う時が。


真の頂上決戦とも言える、佐藤天彦名人 vs Ponanza の一戦です。


これを見ていた当時は、もうメチャクチャワクワクしてましたね。


最強の人間と最強のコンピューターが戦ったらそりゃもう名勝負になると予想できましたから。


前日にお菓子やら飲み物やら買い込んで、当日はパソコンの前に噛り付いてましたね。


そんなワクワクさせてくれた電王戦の棋譜を何となくもう1回見てみたら、やっぱりすごい将棋だったなぁって思ったので、改めてちょっと感想を書いてみようと思いました。


注目のPonanzaの初手

電王戦ではプロ棋士側にソフトの貸し出しをするというルールがありました。


あまりにソフトが強すぎるので惨敗しないための配慮だったのかもしれません。


なので事前にソフトの弱点やクセなんかを見抜く事ができるので若干人間側に有利な条件でしたね。


でも、Ponanzaはそんな人間側の対策をかいくぐる恐ろしいプログラムを組んでいました。それは・・・


初手ランダム


です。プロ側に作戦を絞らせないために、初手が完全ランダムという仕様だったんです。


ただ、ランダムなのはメリットなようでデメリットにもなりかねない微妙な所ですよね。いきなり悪手を指したら大変ですから。


こんな作戦でも成立させてしまうコンピューターの強さは脅威としか言いようがありません。


そんな何を指すか分からないPonanzaの初手は注目でした。


先手、佐藤名人の▲2六歩に対してどんな手を指すのか、Ponanzaの一手は意外な手でした。



△4二玉です。


は?マジで?大丈夫?いくらなんでも奇抜過ぎない?相手はトップ棋士なのに・・・


「いきなりやってくれるな~」


とちょっとワクワクしましたが、最強のコンピューターとはいえ悪手に近い一手で少し心配になってしまいました。


それとこの一手はコンピューターが強いという前情報があるから成立している手だったりしますよね。


もし「コンピューターになんか負ける訳ない、プロ棋士の方が強い」というのがまかり通っていた時期にこんな初手を指されたら大会中止になっていかもしれません。


「プロを馬鹿にしてる、将棋のしの字も知らないじゃないか、馬鹿らしい、これ以上指す必要はない」


みたいになってね。


数年掛けて人間と戦いながら積み上げてきたコンピューターの強さの信頼性によって成り立った一手だったんじゃないかと思います。


飛車先の歩交換にいかなかった

なぜ△4二玉がそんなに良い手じゃないのかというと、1つ挙げられるのは「飛車先の歩交換を簡単にできるから」というのがあります。


「飛車先の歩交換、3つの得あり」


なんて言葉を聞いた事はありませんか?


飛車先の歩を交換するとちょっと有利になるというのが人間が組み立ててきた将棋の世界では常識でした。


何が得かと言うと


・歩を持ち駒にできる
・飛車が相手陣に直通になる
・2五に歩がいなくなったのでそこに銀が出られる


の3つです。


なので佐藤名人は▲2五歩から飛車先の歩交換にいくのかと思ったんですが、いきませんでした。


これは最近、ちょっとこの定説が見直されつつあるからなんです。


コンピューターは飛車先の歩交換をそんなに有効な一手だとは思ってないみたいなんですよね。


コンピューターが強くなった事でコンピューターの意見を聞くようになり、改めて見直してみたらそこまで得じゃないかも?ってなってきたんです。


どういう事かと言うと、一歩交換するメリットよりも一手パスするデメリットの方が大きいかもしれないという感じになってきてるんです。


人間的に見ると、部分的には得な分かれなんですが、より先を読めるコンピューターからすると、ここで飛車先の交換をしなくても後で自然に交換できるから損になるみたいな感じなのかもしれません。


これは私の勝手な予想なので実際はどうなのか分かりませんけどね。


でももし、この1戦がコンピューターと人間の初対局だったら人間側は迷わず飛車先の歩交換をして序盤から先手優勢として喜んでいたのを考えると大きな進歩なのかもしれません。


そうならなかったのはコンピューターによって以前の常識が見直されたという事なので、コンピューターの力を認めたという1つの証拠かもしれませんね。


新構想 棒銀を受ける銀引き

先手は飛車先の歩交換をしなかったので進んでみれば普通の角換わりになりました。


こうなると初手の△4二玉のマイナスがチャラになってるので互角の局面ですね。


名人の棒銀を受けるPonanzaという図式になり進んだ序盤、Ponanzaから予想外の一手が出ます。それがこちら。



上がった銀を引く△5一銀です。


普通なら攻めに使う銀を受けに使うという新構想です。


銀矢倉に組んで棒銀を受けようとする指されてみればなるほどという一手。


その後、銀交換に来た▲1五銀に対しての手筋の△2二銀(下図)など、本局は棒銀を受けるお手本のようなPonanzaの指し回しがとても参考になりました。



棒銀ってやられると困るんだよな~って人はぜひ公式サイトの棋譜を見てください。参考になりますよ。


第2期 電王戦 | ニコニコ動画


結局、名人は銀を捌けずに体制を立て直す感じに進みます。


端の位を2つ取られる

Ponanzaの指し手でまた感心したのは、両方の端の位を取った所です。


9筋の端歩は名人の判断で受けなかったんですが、ここで評価値が後手に振れたので重要な端歩だったみたいです。(下図)



私がやったら単なる手損になりかねないんですが、最後まで生きる展開になったこのPonanzaの読みは流石です。序盤から終盤まで読みが深くて恐ろしいですね。


狭い所に打った△5六角の威力


局面は進み、名人はガッチリ穴熊に組みました。


さすがに名人の穴熊はそう簡単に崩せないだろうし長い勝負になるだろうなと思っていましたが、ここではすでに先手がちょっと作戦負けだったようです。


そしてここからのPonanzaの穴熊崩しの手順が見事だったので本当に感動しました。


名人頑張ってくれと思いつつも、なんて駒を働かせるのがうまいんだ・・・とPonanzaの攻めはものすごい迫力でした。


コンピューターにとって穴熊は苦ではないと言われてしまった感じがします。


ここから▲5五歩と仕掛けたスキを突かれ△5六角と打たれたのが急所になる絶好の角打ちでした。(下図)



穴熊崩しの第一歩とも言える一手で、先手の攻めを封じつつ穴熊をにらむ素晴らしい手です。


この角成りを防いだ先手の▲4八飛は最後まで攻めに働く事ができずに終わりました。


簡単に穴熊を崩される


Ponanzaの△6五歩から穴熊崩しがスタートします。


上図以下、▲5四歩△6六歩▲6八歩△7五歩▲5五角(下図)



と何とか先手も反撃を含みに動きますが、ここからまず穴熊の銀をそっぽに行かされてしまいます。


上図以下、△7六歩▲同銀△7五歩▲8五銀△9三桂▲9四銀(下図)



と穴熊が弱体化してしまいました。そして次のPonanzaの一手が穴熊を崩壊させる見事な一手でした。それがこちら。



△8六歩です。


これがどう対処しても穴熊の崩壊を防げないトドメの一手でしたね。


仮に▲同歩と取ると、△6七歩成▲同歩△同飛成!が強烈な一手になります。(下図)



以下、▲同金△同角成(下図)



となると9四の銀取りに当たってきます。どうしようもない状況ですね。


以下、銀取りを受けて▲6四飛と打つくらいですが、△7六馬と引き次の△8七歩を狙います。この△8七歩が打てるのが先ほどの△8六歩の効果ですね。


それは敵わんと▲7七歩と受けますが、△5四馬と引くのが良い手で後手優勢です。(下図)



動画を見ながら解説を聞いていた時は△8六歩は取っても取らなくても苦しくて絶望的な一手だったのを覚えています。


実戦は歩を取らずに攻め合いに▲4五桂(下図)と行った名人でしたが、ここからあっという間に穴熊が崩壊します。



上図以下、△7八角成▲同金△6七歩成▲同歩△8七歩成▲同金△6七飛成(下図)



と進み、先手の穴熊はバラバラにされました。


上図以下▲7八角と指したんですが、Ponanzaが指した次の手は辛い一手でした。


△6三竜と自陣に引いた一手で名人の攻めを無にする感じです。(下図)



陣形を見ると、バラバラで駒の働きが悪い先手、玉が遠く美しい陣形の後手という状態。


これは見てても辛かったです。


どうやって後手陣に手をつけるんだ・・・こんなに広くて遠い玉なんて見たこと無い・・・


って感じでした。


名人の投了と強すぎるPonanza

その後、▲9一角成△8六歩▲同金△4五歩と進み、王手の▲5五馬に△4四金で佐藤名人の投了となりました。(下図)



解説を聞いているともう先手陣は受けるのも難しくどうしようもない状態との事。投了もやむなしだと。


今が一番バランスがとれている投了図だそうです。


現役最強の佐藤名人がここまで差をつけられるとは予想外でした。


勝てないとしてもギリギリの勝負をする名局が生まれると思っていましたが、何もさせてもらえなかったというのが正直な感想です。


名人すら手合い違いかもしれないとは・・・どこまで強くなってるんだコンピューター将棋は・・・


遥か遠い後手玉を見ると絶望感がすさまじかったですね・・・


最後に

第二期電王戦は最強の人間でも歯が立たないという悲しい結果で終わりました・・・


コンピューターの読みの深さは人間にはなかなか真似できない恐ろしい所までいってしまってる感じがありますね。


本当は電王戦を3期、4期と続けて欲しかったという希望はありましたが、この結果を見るとこれで最後でいいかもしれないと思ってしまいました。


プロ棋士の心を折ってしまう可能性がありますしね・・・


でも、最近は藤井聡太七段がコンピューターを越えた一手とか指して話題になったりしたので、またいつかプロ棋士側に立ち向かう気持ちが出てきたら再開して欲しかったりします。


今はこのPonanzaより遥かに強いコンピューターが出来上がってますが、それの読みを超える一手を人間がまだ指せる可能性もあるので、まだまだ完全に負けたってわけでもないと思います。


超絶好調な藤井聡太七段なら勝てるんじゃないかと期待してしまいます。


あと数年後、藤井七段が名人になったとしたら記念対局としてその時の最強コンピューターと対局してくれたらなぁ・・・なんて思います。


最強の人間対最強のコンピューターの頂上決戦を望んでいるファンもいると思うので、いつか電王戦リターンマッチとかあるといいなと願ってます。


電王戦の予選として行われていた叡王戦も続いてる事だし「叡王が望んだらその時の最強コンピューターとの対局をする」なんて企画があったら最高です。


またいつか人間対コンピューターの究極の対局が見られる日を待っています。